徳富蘇峰先生は明治19年、24歳で文章報国の志を立て『将来之日本』を著わしましたが、これがベストセラーとなり、一躍文名をあげられました。ついで明治20年、わが国最初の総合雑誌「国民之友」を発行、世界の新しい政治・経済・法律・思想・文学などを率先紹介し、明治の憲法と平民主義の普及、実現に貢献されました。
明治23年には国民新聞社を創立し、社長兼主筆として世論をリードされ、さらに毎日新聞社に社賓として迎えられて筆陣を張り、明治・大正・昭和の三代に亘って、先覚ジャーナリストとして活躍されました。
先生はジャーナリストであると同時に、偉大な歴史家であり、政治評論家であり文学の発展にもあずかって力がありました。56歳から90歳に至る35年間、大河の流れるように書き続けられた『近世日本国民史』は全100巻5万ページを超え、個人の修史としては、古今東西に比類をみないものであります。
先生の著作を通して脈々と感じられるものは、愛国の情熱と思想であり、これは私ども日本人として永遠に受け継いでいかねばならぬものであります。また著作を精読、味読すれば、現代社会のあらゆる問題に対する適切な指針を見出すことができると信じます。
蘇峰会 代表理事